書くにまつわる単語帳:「書き紛らわす」

「書き紛らわす」と聞いて、どんな意味かわかりますか?
なんとなく、書くことで気分を紛らわすことのように思えますが、
辞書を見てみると、全く違う意味の言葉のようです。
こんな風に書いてあります。

「筆跡をわからないように書く」(大辞林)

紛らわすのは気分ではなく、筆跡、
つまり、書き手が誰かをわからないようにする
ということのようです。
辞書の用例に、「源氏物語 夕顔」がありましたので、
ちょっと引用してみます。

そこはかとなく書きまぎらはしたるも、あてはかに故づきたれば、
いと思ひのほかにをかしうおぼえたまふ

現代文に訳すと、
身分がわからないように書いてあっても、高貴な趣が感じられ、
その意外性に好感を持った。
といった感じになるかと思います。

夕顔が扇に和歌を「書き紛らわ」したものを光源氏が受け取った時の印象を述べたものです。
「身分」、「和歌」、「書のたしなみ」など、
いろいろな文化を背景にして成立しているシチュエーションですが、
このような微妙な状況にぴったりくるような単語を編み出していた日本人の繊細さに感心します。
(他国の言語で、このような意味の単語が存在するのか興味があります)

現在は、手書き以外の手段が主流になり、筆跡が消えていく中、
絵文字やLINEなどのスタンプが駆使されるのは、
もしかしたら、筆跡にかわるその人らしさ、ニュアンスの表現なのかもしれません。


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